ここでは、合同会社を設立した後、業務を始める上で注意することをまとめました。
合同会社の業務を執行する「業務執行社員」の義務と責任
合同会社では、出資が経営と一致しています。ということは、原則として合同会社の社員全員が代表権を持って経営にあたるということになります。
しかし、合同会社の定款に定めることによって、業務執行権のある社員(業務執行社員)と業務執行権のない社員に分けることも可能です。
業務執行権のある社員は全員、他の会社との取引などでそれぞれが社員の名前と印鑑があれば、契約を成立させることができることを意味しています。ですから、「合同会社の経営は○ ○ さんに任せる」というようなケースでは、合同会社の定款中にちゃんと「業務執行社員」を限定する条文を入れる必要があるということなのです。
社員によって選任された業務執行社員は、株式会社でいう取締役のような権限が与えられるとともに次のような義務と責任を負うことになります。
合同会社運営上の意志決定
合同会社では、複数の出資者で合同会社を設立した場合、経営に関する意思決定は、原則では出資した全員の過半数の同意が必要となります。
社員が多かったり、意見がまとまらないときのために、「多数決にて決定」「2/3以上の多数決」などのように、何らかの取り決めを定款に記載しておくことで、意思決定がスムーズに行われるようになります。
合同会社における利益の分配方法
合同会社をスタートさせ、事業が生み出した利益は、新しい事業に利用したり、合同会社の出資者に分配されたりします。
通常株式会社の場合ですと、出資した株式に見合った配当を分配するしくみになっているため、出資額に比例した見返りが受け取れるわけです。
合同会社の場合、社員同士で自由に分配を決定することができます。
通常は1年間の事業年度が終了した段階で、利益の分配を行うのですが、支払い時期や支払い方法などは、各社員の意見を尊重しながら、分配方法を考えて定款に定めることが必要となります。
社員の移動について
◆新たに合同会社に社員が入るとき
合同会社では、出資して経営に参加する人を「社員」といいますが、仕事を遂行するための「従業員」とは異なっています。
合同会社の場合、社員になりたいからといって、「はいどうぞ」というわけにはいきません。合同会社の社員(出資者)になるには、定款に記載して登記する必要があります。
このことから、社員の合同会社への入社には、ルールが必要となるのです。
となります。
合同会社の定款を変更するには、原則として社員全員の同意が必要となります。また、合同会社の社員となる人は、出資金の払い込みをすませてはじめて正式に合同会社の社員として加入することができます。
ほかに、新たに社員を加入させる方法として、現社員の持分を譲渡するというやり方もあります。この場合は合同会社に出資金を払い込む必要はなくなりますが、合同会社全社員の同意を得て、定款を変更するという手続きは行わなくてはなりません。
◆合同会社の社員が辞めるとき
会社法の規定によると、「合同会社の社員はやむをえない事由があるときには、いつでも退社できる」とあります。社員が辞めると同時に原則としてはその人が合同会社に出資した出資金を返却することになっています。しかしそのとき合同会社に資金がないこともあるかもしれません。そのようなときには、異議の申し立てができることを知っておくとよいでしょう。
◆合同会社の社員を除名させるとき
合同会社の社員の誰かが不正を働いたりして辞めさせるような必要が生じたとき、その社員以外の全員の過半数の議決を得られれば、除名を請求できることになっています。また、社員が破産した場合には、会社や本人の意思にかかわらず、退社しなければならないことも知っておくとよいでしょう。
◆合同会社の従業員はいつでも雇用できる
合同会社の社員になるためには、上のような手続きを踏むことが必要条件となりますが、合同会社に従業員を雇用することはいつでも出来ます。法人である合同会社は、株式会社同様、社会保険や労働保険の手続きは必要になることを覚えておきましょう。
合同会社の定款を変更するとき
合同会社が成長するに伴って様々な変化があるはずです。社員が新しく入ったり、合同会社の本社所在地が変更になったりすることもあるでしょう。そのようなときには、合同会社の定款を変更する必要が出てきます。
合同会社が定款を変更するのは、以下のようなときです。
合同会社の定款を変更するには、原則として合同会社の社員全員の同意が必要ですが、合同会社設立当初に予め定款に別の定めをしておくことによって、全員の同意を集めなくても成立させることができます。
例えば、「合同会社社員全体の3分の2以上の同意により定款を変更できる」などです。
また、合同会社の定款を変更した場合原則として、法務局での登記手続きが必要です。変更内容に応じた登録免許税がかかりますので、注意しましょう。
登録免許税に要する印紙代
合同会社を解散するとき
合同会社は、定款で存続期間を定めておくことができます。そのため、満了となったら、合同会社は解散となります。その他のケースも合わせると以下のような場合です。
合同会社が解散するときには、精算人を置いて清算手続きを行います。
清算人とは、合同会社を解散するための手続きや債権の取立て、債務弁済や残った財産の分配などを行う人のことです。清算人には、合同会社業務執行社員、あらかじめ定款で定めた人、合同会社社員の過半数の同意によって定めた人などが就任します。
清算が完了したら、合同会社の清算完了登記を行います。なお、清算人は、合同会社の帳簿類を10年間保存することになっています。
また、合同会社としてスタートしたのち、成功して事業を拡大することになったような場合は、株式を公開するために合同会社を株式会社へと組織変更することも可能です。
合同会社の定款に特別に定めがなければ、原則として合同会社の全社員の同意により、株式会社への組織変更をすることができます。
その際、組織変更のための計画書を作成しなければなりません。詳しい手続きの方法は、専門家やコンサルタントに相談するとよいでしょう。
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